理事長・校長挨拶
理事長・校長 瀬尾兼秀のメッセージ
世界が、今や不可避となった「グローバリゼーション」の中で、急速に狭くなりつつあります。そのような変化の中、日本の社会が本当に必要としているのは、どのような教育でしょうか?
かつては世界一をねらう勢いだった日本経済はその流れから取り残されつつある、という見方があります。それが事実として、はたしてその原因は、単にいくつかの政策上の失敗だけだったのでしょうか? それとも、私たち日本人の、より根源的な勘違いがあったからなのでしょうか? いずれにせよ、これからの日本の復活を思うとき、日本の教育がどのような方向を向くべきなのか、難しい選択が迫られているのは事実です。
もちろん、答えは一つではないと思います。特に、私立学校には、ある程度の自由が認められているわけですから、それぞれの私学がそれぞれの私学の考えで、進むべき道を模索しています。
もはや、以前のように社会が安定し、高学歴でありさえすれば将来が約束されていた時代は終わりました。30年前とは、違った性格を持つ教育が求められています。この30年、受験偏重の教育を是正するために日本が取ってきた政策は、「ゆとり教育」でした。しかし、その結果、公立学校では生徒の学力が低下し、それを懸念した私立学校の教育の力点は、受験指導に偏重してしまったきらいがあります。そこには良い面もあったかもしれませんが、犠牲になったものも少なくないはずです。
このような状況の中で、駿台学園では、次のようなことを考えています。
1.「個性」「調和」「貢献」
駿台学園のモットーは「万木一心」です。この言葉には、個性をもちながら、周囲と調和し、自分の属する組織に貢献してほしい、という願いがこめられています。「個性」「調和」「貢献」この3つの様子なくして、日本の生徒たちが、これからの世界で活躍していけないのは間違いありません。逆に、「無個性」「孤立」「独りよがり」では、日本の中で、あるいは世界の中で受けいれてもらえないのは明白です。それでは学校は何をしなくてはいけないのか? 駿台学園は、その問いかけを念頭におきつつ指導を行っています。
2.そのためには、学習とそれ以外の高いレベルでの両立
そのためには、まず、バランスのとれた人格が求められます。日本の伝統的な学校教育のありかたには、すぐれたものがあったはずです。かつて学校教育には、「知育・徳育・体育」が不可欠といわれました。何かに極端に特化した、あるいは偏重した教育ではなく、バランスのとれた教育こそが最善であり、私たちはその原点を思い出さなくてはなりません。学習とそれ以外の要素のバランスのとれた教育が第一であると考えます。その考えは、駿台学園のカリキュラム、年間行事などに色濃く反映されています。
3.そして、視野を広げ経験をふやす
さらに、日本の将来を考えたとき、視野の広い、経験豊かな人材が必要であることは言うまでもありません。中学・高校時代は、視野を広げ、多用な経験を積む良い機会です。人生のこの年代こそ、視野を広げることの重要性を認識する最善の時期です。そして、生徒には、書物や映像などを通した間接的な見聞だけでなく、人間の積み上げてきた遺産の実物や、現在の社会のありかたの現実を見て貰わなくてはならなりません。駿台学園が、学校外での体験を重視するのはこのためです。
新しい時代の中、私たちが必要とする人材とは、そして、駿台学園が育てたいと考える生徒像とは、「本質的なことを学んだ上で、それを生かしながら自分の頭で考えることができて、社会に出た後、それぞれの置かれた場で活路を見いだしていく力を持つ生徒」です。より良い未来のためには、単に受験勉強に精を出して、自分の将来の安定を考えていました、という人材だけでは不十分です。
世界経済の軸は、アメリカ的な価値観に基づいたグローバリゼーションからは、微妙にその基軸をずらしつつあり、真の意味で世界的なグローバリゼーションの時代を迎えつつあります。韓国や中国の台頭によりアジアもその存在感を高めつつあり、さらに現在経済危機に苦悩している欧州も、やがては復活をとでてくるでしょう。近未来は各国・各地域がそれぞれしのぎを削る時代になることは間違いなさそうですし、実際、世界の価値基準も刻々と変わっています。このような時代のなか、駿台学園は、将来の「世界」を見据えて、教育に取り組んで行きます。
理事長・校長 瀬尾兼秀